曹洞宗宗門庁運営企画室が昨年11月に公表した「曹洞宗 2045年 予測」がかなり衝撃的な内容であるとお伝えしましたが、これを踏まえた同室による「宗務ビジョンの提案」の一部が先月発表されましたのでご紹介します。
ここで「曹洞宗 2045年 予測」のポイントを振り返ります。
1.曹洞宗の僧侶の数は加速度的に減少し、教師資格を持つ僧侶は3分の1減の約10,500人となり、寺院数の約14,400カ寺を大きく下回る。
2.30歳以上の若手教師は現在の約2,000人から約500人に激減、教師の3人に2人が60代以上という超高齢化が進む。
3.永平寺、總持寺の両大本山への新到掛塔僧(新しく入山する修行僧)は合わせて約40人程度(2004年は209人、2024年は84人)にとどまる。
4.寺院の半数は住職を迎えることができず、兼務寺院または無住職寺院となる。
5.後継者不在を機にトラブルが増加し、放置される寺院や檀信徒に応じられない寺院が増える。
6.総門の財政規模は変わることなく横ばいが続く中、教師一人当たりの賦課金(宗費)の平均負担額は、現在の約26万円から約41万円へと大きく増額する。
その内容にあらためて驚かされますが、悲観的な将来像は多かれ少なかれ、日本のどの宗派にも当てはまるもので、曹洞宗に限ったものではないでしょう。
宗務ビジョンは、2045年以降も教団が持続的に活動するために、おおむね10年後の2035年をめどに、教団が向かうべき方向と達成すべき目標を示すものです。
教団が向かうべき方向としては4つの転換、すなわち「安定と柔軟性を兼ね備えた財政への転換」「教団の未来を先導し信頼される宗務庁への転換」「未来を切り拓く強い教団組織への転換」「社会や宗門の情勢に即した次世代型の常識、発想への転換」を掲げています。
このうち「安定と柔軟性を兼ね備えた財政への転換」については、財政規模の縮小と財政の健全化を重点施策として挙げています。
詳細は省きますが、「前例を踏襲した歳出先行の予算編成」を「予算編成方針を明文化した上での歳入先行の予算編成」に転換することで、教師一人当たりの賦課金の平均負担額を2035年には約23万円に引き下げるとしています。
また、財政の透明性を高めるため、財務諸表などをホームページで一般公開するなどの思い切った案も提示しています。
残り3つの転換の具体的な施策に関しては、今後、まとまり次第公表するということです。
僧侶や教師の数を確保するため、教師になるためのハードルを引き下げたり、在家出身者に住職の門戸を広げるといった改善策も打ち出されるのではないかと大いに期待しています。