臨済宗妙心寺派では10年前から、「第二の人生プロジェクト」と称して、定年退職者の出家を支援する取り組みを行っています。
この旗振り役となったのが、大手電機メーカーの役員を定年退職後、65歳で出家得度し、1年3カ月にわたる修行生活を経て、2001年に長野県千曲市にある開眼寺の住職となった柴田文啓さん(1934年生まれ)です。
柴田さんは「老後出家」を代表する存在として、さまざまなマスコミに取り上げられ、ネットでその記事を読むことができます。
柴田さんの場合、サラリーマン時代に坐禅会に通い、そこで禅僧の加藤耕山師の指導を受けたことが、仏門を叩くきっかけとなったとか。
実は、東京国際仏教塾の修行体験中に、柴田さんから直接お話を聞く機会があり、柴田さんが仏教を勉強し直すために奥さんとともに花園大学仏教科に入学し、88歳で卒業したという話を聞いて、びっくりしたことを憶えています(花園大学では50歳以上の学生を対象に年齢に応じて授業料を免除する制度があり、それを利用したそうです)。
私と柴田さんを比較するのはおこがましいのですが、60歳を過ぎてから僧侶になることを選んだ2人に共通するのは、大好きな仏教をもっと学びたい、という強い思いだと思われます。
定年後の新たな生きがいを見つけたい、社会に貢献したいというのはあくまで副次的なもので、それだけで仏教界に飛び込んでも、長続きしないような気がします。
さて、臨済宗妙心寺派の「第二の人生プロジェクト」ですが、同派のホームページなどによると、応募者は担当僧侶と面談の上、体験修行を行い、さらに師僧の下でお経の読み方や食事作法など修行僧としての指導を受けます。
出家得度を受けた後、2~6カ月の研修を経て、兵庫県姫路市の龍門寺にある専門道場での修行となります。
専門道場での修行は1年以上で、垂示式を終えると、同派から紹介された空き寺の住職になることができます。
なお、専門道場の修行カリキュラムは、高齢者向けに緩やかに設定され、家族との面会が許されるほか、用意された個室では携帯電話やパソコンも使用できるそうです(ただし生活費として年間100万円が必要)。
雑誌の記事によると、「第二の人生プロジェクト」には過去10年で600人から問い合わせがあり、そのうち約60人が出家し、さらに10人が住職になったそうです。
住職は1年で一人のペースですから、決して多いとは言えません。