僧堂安居の話を続けます。
在家出身の中高年に限らず、これから僧堂安居をしようとする人たちにとっては、どの僧堂を選ぶかが重要となります。
私は名古屋市内の自宅から近いという理由で日泰寺に決めましたが、もし地元に僧堂がなければ、刊行物を取り寄せたり、その僧堂で安居を終えた人に聞くなりして、全国に17ある僧堂の中から、自分に最もふさわしい場所を選ぶことをお勧めします。
どうせなら、永平寺や總持寺で安居したいと考える人たちも多いでしょうが、本山僧堂が地方僧堂と比べて修行が厳しいのは間違いないようです(本山僧堂で挫折した人が地方僧堂で安居をやり直すケースも少なくないとか)。
一方、その地方僧堂も、かなりの独自性が認められており、修行のスタイルはさまざまです。
例えば(現在はどうかはわかりませんが)、岡山県の洞松寺では外国人の男女を積極的に受け入れ、安居者の8割が外国人で、僧堂内では英語が公用語となっているという紹介文を読んだことがあります。
在家出身の中高年の場合、その僧堂がそうした人間を進んで受け入れているかどうか、過去や現在に同じ境遇の人がいたか(いるか)どうか、確認する必要があります。
さて、私が安居した日泰寺についてですが、その特徴を一言でいうとすれば、住職の養成機関としての性格が強い、ということになるでしょうか。
実際、私の後に上山した東北地方出身の40代の男性は、地元に僧堂があるにもかかわらず、住職に必要な技能を短期間で身に付けられるという理由で、わざわざ遠くの日泰寺を選んだと話していました。
逆に、純粋に仏教を学びたい、只管打坐(しかんだざ)の教えに従い1日に何時間も坐禅をしたいという人には不向きかもしれません。
また、僧堂では精進料理しか食べられず、栄養不足になるのではないかと心配している人がいるかもしれませんが(前述した「食う寝る坐る 永平寺修行記」では、修行僧がビタミンB1不足から脚気となり、入院する話が出てきます)、日泰寺では四九日(しくにち、4と9の付く日)は肉や魚の料理が解禁となります。
さらに外部からいただいた御添菜は、日付に関わらず食べてよいことになっており、有り難いことに、近所のお店などからトンカツなどの差し入れが頻繁にありました。
栄養面での懸念はまったくなく、安居中に数十㌔太ったという修行僧も過去にいたそうです。
そのほか細かいことですが、毎日入浴できました(以上が日泰寺に限った話なのかどうかはわかりません)。